種子島を離れて3年。
夢に描いた都会での生活は現実には結構寂しいもので、仕事だって上司から怒られてばかり…。
こんなはずじゃなかったのに。いっそのこと、すべてを投げ出して島へ帰ろうか?
そんなことばかり考えていたある日。実家から、サツマイモが届いた。
両親が作ったサツマイモ。子供の頃から私の大好物だった。
あの澄んだ海に囲まれた、のどかな島に思いを馳せながら、同封されていた母からの手紙を読む。
頬に一粒、涙がこぼれた。
「いつでも帰れる場所がある」そう思ったら、あと少しだけ頑張ってみようと思えた。
涙を拭い、蒸かしたばかりのイモを一口かじる。
甘くて、懐かしい島の香りが口いっぱいに広がった。自然と笑みがこぼれる。
これを食べたら、実家へ電話をしよう。
焼酎片手に、電話とにらめっこしている父の姿を思い浮かべたら、なんだかとても温かい気持ちになった。
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